明治10年3月届

画工未詳「(鹿児島県)有のそのまゝ」拾九号

1877-03-05 「有のそのまゝ」19号
生住昌大 蔵

画題:(鹿児島県)ありのそのまゝ 拾九号
判型:大判錦絵
画工:未詳
版元:大阪・金井徳兵衛
届日:明治10年3月5日/同4月出版

詞書

続いて、西南評は、四月八日、熊本籠城の兵を一大隊を奧少佐君引率して、城門を出て安政橋まで押だし来るに、橋は賊が毀ちたれば、皆々徒渡りして進むほどに、南岸の賊あるを見懸け、兵を残して是に当らせ、其隙に乗じて兵を進むる途中、官軍の探偵、兵に行合ひ、本営の置処を聞て、速やかに宇土本営へとぞ来会せられ、城中の堅固を語り、尋て十四日には、八代口の官軍、川尻を攻め取り、山川中佐君、一中隊を具して熊本城に至りたり。明る十五日は、雲務晴れわたり、官軍大挙して熊本城へ連絡を遂げられしは、心地よくこそ見へにけり。植木、木留の賊は、所々に火を懸け、煙りに紛れ、立田山の方へ散々後を見せ、官軍遥に是を望むに、日向路さして潰走なす。去る程に、昨今西郷隆盛の所在がとんとわからず、或ひは舩に浮むで琉球へ逃れた、支那へ落たなどゝ、世説紛々たるに、いづれも信を置に足らず。只、敗走の中にあるべし。天なるかな。連戦数日も、一日一瞬に邪雲散るにいたらば、嗚呼歎ずべし。跡の確報は、次号を待給へかし。

所蔵者/掲載図書

生住昌大
海の見える杜美術館
鹿児島市立美術館