生住昌大 蔵
画題:(鹿児嶋県)有のそのまゝ 七号
判型:大判錦絵
画工:未詳
版元:大阪・金井徳兵衛
届日:明治10年3月5日/同3月出版
詞書
扨も、西南戦争については、親を見すて妻子を跡にし、勇々しく進発をなすといふも、忠勇義心、一図に起るが中にも、熊本県下士官何某は、官軍の隊に加はり、目覚しき討死を遂げたるが、其妻女はかくと聞より、「はれも年月国恩を頂き、むなしく自滅せんよりは、いでや夫の無念を雪ん」と、女ながらもかひがひしく姿をよそおひ、長刀、小わきにかひ込んで、「おのれ賊兵、のがすまじ。いざ、出陣」といふ折しも、こゝに年比召遣はるゝ婢は、袖にすがり、「まづ待給へ。わなみも主人の忠死を見捨るによしなし。死出の御供仕らん」と、見返りもせぬ妻女に付そひ、戦場さして出ゆく。向ふに、人やあるは、まさしく賊党の連類なれば、手早く剣をふり廻し、切込み、突入り、首をはね、よい血祭りと笑みをふくみ、戦地ふかくこみ入りこみ入り、方今稀成る貞操烈女、今巴ともいふべきか。をしむらくは、其薫名をたしかにきかず。おいおい確報もありませうから、次号にくわしくをしらせ申ます。
所蔵者/掲載図書
生住昌大
海の見える杜美術館
福岡市博物館