明治10年3月届

画工未詳「(鹿児島県)有のそのまゝ」六号

1877-03-05 「有のそのまゝ」6号
生住昌大 蔵

画題:(鹿児島県)ありのそのまゝ 六号
判型:大判錦絵
画工:未詳
版元:大阪・金井徳兵衛
届日:明治10年3月5日/同3月出版

詞書

つづいて、西南暴動、熊本県下の続戦のはなしは、官軍は田原坂の囲みを三ヶ所まで乗取り、残る一堡を目がけ、陸軍士官何某と名乗て撃て入り、縦横無尽に勇を震へど、いかな当るにかたく、続く手勢と七人とも枕をならべ討死せしは、目覚しかりし次第なり。「名、不詳。また、熊本の籠城は堅箇いふまでもなけれど、外廓、竹の丸、石垣より、賊兵をし入りたるにや。一と夜、城内の戦争物音、諠しくありしが、其薩兵、幾銘か帰り来らず。鏖になりしやらんと云いあへり。爰に薩兵より一騎当千と勇を振つて、前原一格と名乗つて突て出たるは、「遠きものは音にも聞け、予は前原一誠の弟なるが、さきに天網を逃れ、今一隊をそなへ、花々しく兄の弔ひ軍せん」と其銘を籏にしるし、十一分に駆け廻り、薄手を屈せぬ若武者を、あれ討取れと、官軍は口々に呼わり、専ら撃合ふありさまなりとぞ。跡はをいをい、次号に。

所蔵者/掲載図書

生住昌大
海の見える杜美術館
鹿児島市立美術館
玉名市立歴史博物館こころピア
福岡市博物館