浦野浅右衛門

蜂須賀国明「(西郷)隆盛家族離別の図」

1877-10-12 国明「(西郷)隆盛家族離別の図」
生住昌大 蔵

画題:(西郷)隆盛たかもり家族かぞく離別りべつ
判型:大判錦絵3枚続
画工:蜂須賀国明(蜂須賀国明)/応需国明筆
版元:東京・浦野浅右衛門
届日:明治10年10月12日

詞書

西郷隆盛、子息菊太郎を膝近くに招き、「汝、既に十三才。何ぞ善記億をなし、今某が言ことを亡失することなかれ。抑々、出陣の後、肥後、日向に有て某戦ひを見るに、我運伝無き。戦ふごとに敗し、味方は敵に降り、何ぞ何迄かつみを作り、数多の人を損失するは本意に不有。得より討死と思へども、隆盛、官軍に追れ日向の幽谷に亡びしと、後世識者の誹りを憚り、一旦古里に立返り討死せんと、去る三十日の夜、大軍を討破りて、今爰に及びたり。明日は必ず討死せんと思ふなり。汝、末期の対面に教訓をのこさん。夫、鳥の将に死んとする時、其呼声悲し。人将に死んとする時、其言ことをよしと謂。況や父として子に遺言ことをや。汝、某無後は伯父頼道を父と思ひ、万事ことをもとらず、生長の後、君に仕へ忠勤を磨むべし。未だ此外数か条、自筆に記し置たる此一巻をよく熟どくせよ」と、うやうや敷も与うれば、菊太郎は押いたゞき、只々涙だにかき暮を外の見目哀也。

(右)菊太郎乳母、愛妾、西郷奥方、娘自妙
(中)西郷隆盛
(左)倅菊太郎、辺見十郎太

所蔵者/掲載図書

生住昌大
丹波恒夫『錦絵にみる明治天皇と明治時代』