真匠銀光「（鹿児島新聞）車返戦之図」

却説、官軍の勢ひは、賊の大軍に近突き攻立しが、賊軍より野津少将の軍中を目掛て、猪武者と聞へある賊将桐野利秋、真先に進んで恰も猛虎の勢ひにて押寄るに、官軍進撃して大炮小銃を連発す。其炮声、空に轟き、霹靂の砕けて落るが如くなりしが、野津少将は之に応撃し、千変万化と戦ひしが、賊将利秋黒烟の隙を潜り、白刃閃かし、野津少将の陣中へ切込だり。野津少将、之を事ともせず奮激突戦し、互に火花を散して戦ひしが、終に勝敗決し難く、引訣れて、賊軍は黄昏の鐘の音を相図に散乱せしと云。
　大多□（金偏に常）誌

（右）高城重治
（中）平山新介、野津少将公、
（左）三好少将公、逆将桐野利秋、浅井直之進、肥後介右衛門

生住昌大
海の見える杜美術館
塩谷七重郎『錦絵で見る西南戦争』