六花園芳雪「（鹿児島県）明治太平記」

戦争せんそうの景況けいきやうはいまだ確報かくほうをきかざれども、熊本城くまもとじやう中ちうは連日れんじつ固守こしゆして、猥みだりに兵へいを動うごかさず、迫せまれば伐うち、北にぐれば追おはずして後援こうゑんの至いたるを待まつに、野津のづ、三好みよしの両君りやうくんは大兵たいへいを引て、廿六日頃ごろは筑後ちくござかいなる南の関に着ちやくせられ、木この葉は町に屯たむろする官兵くわんへいと熊本城くまもとじやう中ちうと三方よりして、城下と植木の暴徒ぼうとを掃攘そうしやせらるゝならんとの説せつなり。既すでに一隊いつたいの兵へい、植うへ木に屯たむろする暴徒ぼうとにあたつて戦たゝかひしときは、官軍頗すこる苦戦くせんにて、一時南の関に引揚、山鹿の官兵くはんへいと合がつせられしとか聞きこへたるのみ。其後の報はうは知しりがたしと雖いへども、暴徒ぼうとは専もつはら刀とうを揮ふるひ、砲烟ほうゑんの下より激戦げきせんするよし。併しかしながら、昨今こん大兵たいへいがことごとく合期がつごして討うつに至いたらば、数里すりの外ほかにしりぞけらるゝ事、必定ひつじやうなるべし。

谷少将、児玉少佐
弟子丸応助、児（玉八）之進、永山九成、中島武彦、村田三助、篠原国幹、別府九郎、河野四郎、池上四郎、西郷小平、旧正三位陸軍大将西郷隆盛、桐野利秋

生住昌大