玉亭芳峰「征討電聞　五ヶノ荘戦争」

却説さてとく、肥後国ひごのくに川尻かはしりの陣じんを魁首くわいしう隆盛たかもり引退ひきしりぞひて、人吉ひとよし辺へんより嶮岨けんそう第一の五ケノ荘しやうに屯集じゆんしうし、尤もつとも桐野利秋としあき、淵辺ふちべ高照たかてる、佐瀬させ一格かく、別府べつぷ九郎くらう等ら、三千有余うよの勢せいを引率しひいて、所しよ々分わかち、他郷たがうより其その境さかいに入いれず。依而よつて官軍くわんぐん勢ぜい、追々おいおい熊本くまもとより龍譲りやうじや虎賁かうふんの勢いきをひにて進撃しんげきす。双方さうほう火花ばなを散ちらして激戦げきせん数会すくわいに及およぶと雖いへども、暴徒ぼうとふは険地けんちえ立籠たてこもり、将しやう隆盛たかもりは此地このちを脱だつせりと云いう。

西郷小平、佐瀬一格、西郷隆盛、桐野利秋

生住昌大
鹿児島県立図書館
鹿児島市立美術館