画工未詳「鹿児島事けんしんぽう」第六号

去程さるほどに、暴徒ぼうとふは延岡のべおかにせまり、西郷、桐野きりの、村田、池上、貴嶋きじま始はじめとして、今回こんくわいは必ひつし此地ちに決定けつじやうし守衛まもりをす。折おりから官軍くわんぐん第一、第二別働隊べつどふたい、第二の先鋒せんぼふ、山手てより延岡に…（破損）…兵へう、海かいがん通どふりよりいる。之これに於おいて熊田（地名ちめい）を部署ぶしよと定さだめ、右に第四、左りは第一とし、第三を延岡内外うちそとの守備まもりそなへに当あつ。第四旅団しりょだんは大武村おゝたけむら向むかふに戦たゝかひ、一時じは切きり込こみまでもなだれたりしが、之これを撃うちて退しりぞく。尚なを、八月十五日は別働べつどふ部署ぶしよ口にて未明みめいより合かつせん。第四の正面せうめんは遂ついに無鹿村むしかむら、セウシ(地名)口の二、三を奪うばひ、暴軍ぼふぐんを追払おいはらふ。また一手は川かはの下流しもながれを前岸まへぎしに渡わたる。別働べつどふの正面せうめんは、トウカ阪さかを奪うばひ、其そのきり中尾なかを山絶頂ぜつてふを目的もくてきに戦たゝかひ、是これまたおとしいれ、漸やうやく収む。此大戦争おゝせんそふには、西郷、桐野は自みづから大声になつて指揮さしづせしと云々。

藤田武一、池部吉十郎、貴嶋清、暴徒総将西郷隆盛、桐野利秋

生住昌大